常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

blitz

本日のDY(11/21/10付け)のスポーツ欄に以下の見出しがありました。
Kato blitzes Berlin
これはスピードスケートの選手である加藤条治がベルリンで開かれているワールドカップで男子500mに出場し,見事優勝したことを伝えています。
今回着目するのがblitzという不思議なつづりの単語です。辞書で調べてみるとこの単語は元々名詞で用いられていて「(飛行機・戦車による)電撃戦;急襲」といった意味があるようです(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。さらに同辞書には「高齢のイギリス人にはこの語から第二次世界大戦中にロンドンを空爆したドイツ空軍の5トン爆弾(blitz)を連想する人が多い」という記述がありました。このことからもわかるように,この語は1940−41年にドイツ空軍が引き起こした「ロンドン大空襲」と密接に関わっているようです。見出しの前後を読んでいてわかったのですが,このblitzは元々blitzkriegという単語の省略形で,blitzkriegはドイツ語で“lightning war”という意味があるようです(『リーダース英和辞典』第2版,研究社)。
今回このblitzは動詞として使われているので「…に電撃的攻撃をかける,猛攻する;だいなしにする(destroy);こてんこてんにやっつける,圧勝する」といった意味があります(『リーダース』同上)。試(私)訳では「加藤ベルリンを征する」となりそうです。歴史上,ドイツが攻撃を仕掛けロンドンは多大なる被害を受けましたが,今回記者はコミカルに加藤条治選手がベルリンを攻めたような表現をしています。(ゼミ生 camel)