常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

信号無視

読み返しているうちにもう一つ面白い記事がありました。JT(07/21/10付け)のasia-pacific/worldでは,中国の新たなビジネスを紹介しています。そのビジネスとは臨月の中国女性がアメリカへ行き,そこで子供を産み,その子供がアメリカの市民権を取得した後,母子を本国に帰すという一連の手続きを支援するものです。アメリカの市民権があると教育を受ける際,優位な立場に立てるのだとか。また一人っ子政策を回避するためという論も出ています。
なぜ,アメリカで子供を生むと現地の市民権が取得できるかも同紙に書いてありました。
“The 14th Amendment to the U.S. Constitution, ratified in 1868, says anyone born on U.S. soil has the right to citizenship.”
つまり,アメリカの土地で生まれた子供はアメリカの市民権を取得できる権利を有すると規定されています。市民権のためだけにアメリカに渡るのは一見,法を触れているような気がしますが,斡旋業者の主張によると…
“It’s like jaywalking. The policeman might fine you, but it doesn’t break the law.”
それはjaywalkingのようだと言っています。ところでjaywalkingとは一体何でしょうか。辞書で調べてみるとjaywalkで「《主に米略式》交通規制[信号]を無視して横断する」と明記されていました(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。彼らにとっては,上記の問題など大したことではないというのがここから分かります。確かにアメリカに入国する際,妊娠しているという理由だけで入国を拒むことはできません。市民権を得る目的でアメリカに渡るのが好ましくないとされていても,それを取り締まる具体的な方策は存在しないのです。
国際社会で急速な成長を遂げつつも,一人っ子政策など人口増加に歯止めを掛けようとする中国と世界最大の経済大国であるのに移民問題を抱えるアメリカ。双方の国が抱える問題が如実に現れている記事でした。(ゼミ生 camel)