常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

〜によれば

授業が始まり,研究,英語の勉強,授業準備のお手伝い,TAなどやることに追われる生活がやってきました(先生方はこの何十倍も忙しいので本当に大変です)。大学院生活はとても充実していますが,やはり時間のたっぷりあった春休みが恋しい今日この頃。時間を戻すことはできませんので,せめて気分くらいは休日に戻って現実逃避を,ということで日曜日のTHE DAILY YOMIURI(2010年4月11日)から。今回は内容説明なしの見出し一発勝負です。

The Gospel−according to Philip

according to〜と言えば受験ではお馴染みのphraseですが,「according to〜=〜によれば」と一語一対応の訳で終わらせず,もう一歩踏み込んでみましょう。以下,田邉祐司『1日3分脱「日本人英語」レッスン』(朝日新書)からの引用です。

「〜」の部分に入るのは,「自分以外」の特定された情報源なのです。つまり,話(筆)者はaccording to〜を使うことにより,あくまで「第三者の意見」であることを示したいわけで,meはもちろん,usやyouはダメ。さらに,generalなopinionやviewといった言葉も「〜」には入りません(in my opinionなどで置き換えます)。…もう一つmind the gapしたいことがあります。それはこの表現が「自分はそう考えていないのに」という不満を暗示したり,反論として使われたりすることです(cf. 『ジーニアス英和辞典 第4版』大修館)。例文を挙げておきますので,さらなるルールをつかまえてください。
According to Mick, it’s a brilliant film.(ミックが言うには,それは抜群の映画だ→自分はそうは思わない)(Oxford Wordpower Dictionary for Learners of English

見出しに戻ってみましょう。上記の解説からもわかるように,見出しのaccording toには「この記事はThe Gospelに対するあくまでPhilip氏の考え」「筆者(記事を書いた記者)はあくまで第三者の立場です」という「皮肉」のニュアンスを読み取ることができます。もちろん「Philip氏によれば」と訳しても問題はありません。ただ,今回のようなことばの裏に隠れたニュアンスまで掴めたとき,「ことば=記号」という図式を超えた喜びがそこにはあるような気がします。

ゼミ生の僕が言うと説得力に欠けるので,According to Koyamamotoと言われてしまうかもしれませんが,『1日3分脱「日本人英語」レッスン』はコストパフォーマンスの高い(たった740円+税)良書だと思います。(院生 小山本)