常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

動詞の妙#3

一昨日のgacha(breeze into~,「動詞の妙」参照),今日のcherry well(breeze into~,「動詞の妙#2」参照)に引き続き,「動詞+into」を採り上げます。

Even sweeter than slipping into another green jacket for Mickelson was seeing his wife waiting for him behind the 18th green at Augusta National with tears streaming down her face.(THE DAILY YOMIURI 2010年4月13日)

これはMastersでのPhil Mickelsonの4年振り,3度目の優勝を伝える記事の1文です。服などを「着る」(動作としての)はput onが一般的ですが,ここではslip intoを用いています。ここは複数の解釈が考えられます。

まず『研究社英和中時点』(研究社 第7版)で調べてみたところ,slip into〜で「するりと身につける」とありました。Mickelsonは乳がんを患いながらもgreenで待つ妻Amyに優勝の証であるgreen jacketを着た姿を早く見せたかったのではないでしょうか。だとすると,put onよりもslip intoの方がここでは適当です。
また,最終日Mickelsonは2位からのスタート。そこからの劇的な逆転優勝ですから,slip into(すべり込む『リーダーズ英和辞典』研究社 第2版)しての勝利ということになります。
さらに,この日の彼の最大の見せ場はティーショットを右の林の中に打ちこんだ13番(パー5)。この難しい状況で彼は目前の木の間をslip into(通り抜ける『リーダーズ英和辞典』研究社 第2版)させgreenをとらえます。このショットは目の肥えたパトロンをうならせました。

夫婦の強い絆を見せたMickelsonとは対照的に,不倫騒動で注目を集めたTigerは結局4位に終わりましたが,復帰戦としてはまずまずの結果だったのではないでしょうか。これからはslip(踏みはずす『リーダーズ英和辞典』研究社 第2版)することなく,ゴルフに専念して,また活躍してほしいと思います。次の担当はKooriでお願いします。 (ゼミ生Fu-min)

なぜか,"Slip, Slop,Slap"(順番はこれだったかな?)というDown Under(Australiaの別名)の日焼け防止用のスローガンを思い出しました。(by UG)