常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

polychrome woodblock print

 今日、自分は東京.両国の中学校へ英語検定を受けに行ってきました。そして受検後に時間があったので、その近くにある「すみだ北斎美術館」に行きました。北斎とは、「冨嶽三十六景」や「凱風快晴」などの作品を世に残した江戸時代末期に活躍した浮世絵師である葛飾北斎のことです。現在この美術館では多くの人が知っている浮世絵師である北斎とは違う、パフォーマーの顔をもった北斎の作品が展示されていました。
 中でも印象に残ったのは、北斎が江戸や名古屋の神社の開帳の際に記念として120畳分もの大きな和紙に北斎自身をモチーフにした巨大ダルマを描いていたことです。その目的は神社の繁盛、多くの参拝者を神社に呼び起こすためでなく北斎の作品を多くの人に知ってもらうために描いたといわれています。その絵をみると「冨嶽三十六景」などの格式ばったあるいは荘厳とした作品とは異なりタッチが今の漫画のようでかわいらしく描かれていて、とりわけ美術作品だと構える必要がなく鑑賞できた気がしました。
 いろんな作品を鑑賞していると、外国の方に向けその作品の説明文が英語で書かれた箇所を見ました。すると “polychrome woodblock print” という見慣れない単語と遭遇しました。『ジーニアス英和辞典第5版』(大修館) によると、“polychrome” は「多くの色を使った」 とあり、“woodblock print” は「木版画」であるとわかります。ではこの2語を合わせてなんと訳されるのでしょうか。
 多くの浮世絵は、黒一色で描かれていましたが次第に鮮やかな色を複数用いて絵を描く浮世絵師が台頭したそうです。その様な色鮮やかな浮世絵をみて人が「錦布を広げたような絵だ」と表現したといわれています。そこから複数色を使って描かれた浮世絵のことを「錦絵」と呼んだそうです。 したがってここでは「錦絵」と訳されるのが望ましいといえましょう。
 他にも、「冨嶽三十六景」のように大きな紙に描かれてた浮世絵以外にも、ノート1枚分に描かれた浮世絵が何ページにも及ぶ「北斎漫画」というものも展示されていました。そこには桃太郎が勇ましさとかわいらしさを兼ね備えた出で立ちでいる絵や、江戸の神社が小さくいくつも描かれている絵もありました。今回展示されていた作品をみて今まで持っていた北斎のイメージがガラッと変わった気がしました。(Hapidra)