常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

minor inner reaping throw

リオオリンピックの柔道男子73キロ級で、先生と同じ山口出身の大野将平選手が日本の美しい一本柔道を世界に見せつけ、金メダルを獲得しました。

Olympics: Ono snatches judo gold, Matsumoto bronze at Rio Games

RIO DE JANEIRO (Kyodo) -- Reigning world champion Shohei Ono demolished the competition to capture the men's 73-kilogram title Monday, giving Japan its first judo gold at the Rio Olympics.

中略

"I'm really happy. I am not totally satisfied with my performance but I think I was able to convey the brilliance, beauty and strength of the sport that is judo to the people watching," said Ono, who executed a minor inner reaping throw for the victory.

http://mainichi.jp/english/articles/20160809/p2g/00m/0sp/002000c

今回取り上げるのは、“minor inner reaping throw”という表現です。最後の単語が“throw”であることから柔道の投げ技を表していると分かります。また“reap”をLDOCEで調べてみると、“to cut and collect a crop of grain”と定義されており、「〈作物〉を収穫する、を刈る」と意味すると分かります。このことから、「まるで稲を刈るように、相手の足を畳から刈り取って倒す」という意味合いが“reap”に込められていると分かります。したがって、“minor inner reaping throw”は、大野選手の決勝での決め技になった「小内刈り」を意味しています。

“minor”や“inner”についても少し整理してみると、“minor”は「小内刈り」や「小外刈り」などの「小」を、“inner”は「大内刈り」や「内股」などの「内(相手の足の内側)」をそれぞれ表しています。ちなみに過去の記事で確認すると、“major”と“outer”がそれぞれの対義語として用いられるのが分かりました。

最後に“execute”にも注目してみると、『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)では「〈技術を要すること〉を上手く実行する」の他にも「〈芸術品など〉を製作する」を意味することから、大野選手が最後までこだわり続けた「柔道という競技そのものの美しさ」を表していると考えられます。(ninetails)