常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

twist

前回に引き続きセレブたちの間で流行するチャリティーについてです。たったひとつの単語ですが,調べてみるとやっぱり言葉は面白いと実感させられます。
(前略)Singer Cheryl Cole is also rolling her sleeves up in a bid to "give something back". The Cheryl Cole Foundation has been registered with the Charity Commission and will distribute grants to help disadvantaged youngsters in the North East improve their life skills and train for work. Both ventures reflect a new twist on celebrity social activism.
http://www.independent.co.uk/news/people/news/the-new-celebrity-musthave-a-charity-6257625.html
今回は,赤字で示したtwistについてです。最初に意味を書きますと「何か予期しないできごと」のことを言うときに使うことばのようです。コンテクストや見出しを考慮すると,おそらく記事ではa new twistで「あたらしい流行」のような意味合いで使われているのだと考えられます。たとえば,LDOCE 4th Eds. ですと,名詞twistの第1義に“an unexpected feature or change in a situation or series of events”と定義されています。
LDOCEでは,名詞twistの第1義が上記の定義で書かれていましたが,これについて,もう少し調べてみると,この意味は比較的新しい時代に使われ始めた言葉であることがわかります。Oxford English Dictionary 4th Eds.によると,この意味での名詞twistは,第21義cにあるように,比喩的な表現であり,最初の出典は,バッド・シュルバーグ(Budd Schulberg)が1941年に発表した小説What Makes Sammy Run?であるとされています。引用をすると“1941 B. Schulberg What makes Sammy Run? ii. 31 It's a comedy with a helluva twist in it.‥ she kidnaps him.”(強調筆者)とあります。
しかし,いったい何の比喩で“an unexpected feature or change in a situation or series of events”という意味になったのか疑問が残ります。もともとの意味は,動詞twistで“to divide, separate”という意味です(cf. two)。この意味で使われたのは1340年であるとされていて,これから130年ほど経ってから,われわれがよく知る「糸や繊維をより合わせる」という意味になりました。それからまた時が経って16世紀になると「絡まる,巻きつく」という意味を帯びるようになりました。こちらの意味を,想像力を最大限に発揮して解釈すると,なんとなくわかりやすくなります。2本の糸を丁寧に編むことによって,まったく新しい編み物が生まれます。こちらは,予期して作ったもの。しかし,その途中に絡まってしまうことは,まったく予期していないできごとです。正確な由来はわかりませんが,twistが「予期しないできごと」という意味なったのは,「絡まる」という意味の比喩的な表現なのではないかと推測されます。
以上を踏まえると,セレブレティーの間のチャリティーという現象は,今のセレブ達の社会奉仕的な行動を反映した予期もしない新しい流行というものということがわかります。今の世界中の経済状況を考えると,その意味がわかるような気がします。また,twistは以前にUG先生が取り上げている言葉でもあります。UG先生の記事の方が比喩的表現のtwistの意味が明確にわかりますので,ぜひご参照ください。(Othello)
http://d.hatena.ne.jp/A30/20100910/1284109740