常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Summer-of-Love vibeとdolled up

RSC (Royal Shakespeare Company)が、A Midsummer Night’s Dream(『夏の夜の夢』、初演1590〜1596年?) を上演し、評判も良いようです。今回は、The Guardianの劇評から英語表現を拾います。

In fact, I couldn’t have been more wrong. Indeed, there were several moments when I found myself physically helpless with laughter. Meckler is evidently a child of the Sixties, and this production has an irresistible Summer-of-Love vibe about it.
Hermia and Helena are dolled up in white Mary Quant mini-dresses, and there is a delightful psych-folk score by Keith Clouston. The forest looks like the cover of a Sixties album with its luridly lit silhouettes of trees, and there are some hauntingly trippy moments, most notably when multicoloured chairs descend from the flies. Meanwhile, Titania makes love to Bottom on a flying sofa garlanded with flowers.

http://www.telegraph.co.uk/culture/theatre/theatre-reviews/8684963/A-Midsummer-Nights-Dream-RSC-Stratford-upon-Avon-review.html

劇評を読んでいると本当に面白そうです。さて、最初のSummer-of-Love vibeとは、なんのことでしょうか。まず、Summer-of-Loveから考えます。これは1967年の夏にアメリカの西海岸から発信されたヒッピーを中心にしたムーヴメントのことです。とくにLSDなどのかかわり合いが深く、自然的なライフ・スタイルと超現実的な音楽や芸術を伴った社会現象です。まさにヒッピーの活動の〈最盛期〉(summer)であったといえ、“The Long Hot Summer”などと呼ばれることもあります。今回の劇では、Midsummer Night’s Dreamにおける妖精が巻き起こすドタバタ喜劇を、ロックが一番盛り上がったとされる時代Summer of Loveに掛けて上演されているのです。

つづいて、音楽雑誌やサーフィン雑誌などで見かけることも多いvibe。これは、vibration「雰囲気、感じ、印象」が語源の言葉で、1960年代から使われ始めた言葉とされています(『アフリカン・アメリカンスラング辞典』研究社)。vibeは、「(いい意味で)ゾクっとする感じ、いいノリ」(同上)、「雰囲気、様子、気配」(『リーダーズ英和辞典』研究社)などの意味になります。

最後にdolled upです。おそらく「着る」のような意味で使われていることはわかりますが、念のため、辞書で確認してみます。三省堂の『ウィズダム英和辞典』によると他動詞で「〈くだけて〉〈女性が〉《〜のために》(美しく)着飾る、おめかしする(up)」とあります。つまり、劇中では、ヘレナとハーミアは――60年代に流行した鮮やかな色のミニスカートやホット・パンツやアンクル・ブーツなどで有名な――マリー・クワントのミニ・ドレスで美しく着飾っていることがわかります。

また、60年代イングランドのファッションは専門書も数多くあり、わたしも数冊持っていますが、自分と同じくらいくらいの年齢の若者が個性を出そうと努力していた点は、とても励みになります。60年代は、ファッション業界において旧時代と新時代が常にせめぎ合っていて、革新的なファッションが多数登場しました。ちょうどこの劇では、革新的なサマー・オブ・ラブの時代を反映しているようです。『夏の夜の夢』も抜群に面白い劇ですし、もし放送されたりやDVD化されたりしたら、ぜひ観たいと思います。(Othello)