常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

nudge-nudge and dens of vice

エリザベス1世に新事実!?本当は〈ヴァージン・クィーン〉ではないということは,よく知られた事実ですが,まさかここまでとは。真相を英国大衆紙Mailが伝えています。
By the standards of later ages — and even today — society then was especially open in its use of sexual language. Shakespeare’s plays are full of nudge-nudge references to rutting, scrambling, sluicing, ravening and lock-picking.
The playwright’s work mirrored and fed the erotic obsessions of the age. This was a land where prostitutes were known as Winchester geese because the Bishop of Winchester owned much of the property that housed London’s dens of vice.
http://www.dailymail.co.uk/femail/article-2031177/Elizabeth-I-Virgin-Queen-She-right-royal-minx.html#ixzz1WcErnEYZ
最初にnudge-nudgeに注目してみました。nudgeは動詞で「(注意を引くためにひじで)そっと突く;注意を促す」とあります(以下辞書の引用はすべて『リーダーズ英和辞典』研究社)。名詞で「軽い突き」という意味です。例文では一語で,「ほらほらナニのことで(性的な意味合いをほのめかす表現)」とあり,これを踏まえると本文では「アレのこと」と訳せます。
続いてdens of viceとはどんな意味でしょう。手持ちの辞書には,記述がありませんでした。コンテクストを考えてみると,これは「売春が横行する場所;悪の巣窟」という意味だと思われます。denとは「(野獣の住む)巣,穴,洞穴」という意味で,viceは「悪,悪徳,売春」といった意味です。
少し,本文に登場することばについて考えてみます。“Winchester geese”は16世紀にテムズ川の南のリヴァティー(Liberty)と呼ばれる特別行政区(図1の赤で囲んだ場所;汚い図ですみません)にあったとされます。リヴァティーには,グローヴ座など多くの劇場もありましたから,記事本文のような,時代を反映したネタに観客や劇作家は敏感であったはずです。とくにシェイクスピアの問題劇『尺には尺を』(Measure for Measure)は,売春宿の取り壊しにまつわる話ですので,おそらく当時の観客は,当時のロンドンの状況と劇を照らし合わせて劇を観ていたのではないかと思われます。(Othello)