常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

kick up

今回は『ハリーポッターと炎のゴブレット』から英語表現を拾います。
ハリーが4年生になった年に,ヨーロッパの魔法学校3校が集まり,Triwizard Tournamentが開催されました。これは,各校1名ずつ代表者が選出され,戦っていくのですが,誰の仕業か,立候補もしていないのにハリーも代表者に選ばれてしまいました。そこでハリーが周りから脚光を浴びることに,ロンが嫉妬してハリーと仲たがいの関係になってしまいます。これは,きっと誰かがハリーへの罠だとハーマイオニーは言います。そしてシリウス(ハリーの名づけ親)に手紙を書くようにと言いました。しかし,ハリーの返事はというと…
‘Yeah, give Ron a good kick up the…’
ここで採り上げるのは,kick upという表現です。これは名詞ですね(kick-up)。そこで『オーレックス英和辞典』(旺文社)を引いてみると,kick upはアメリカの口語で「騒ぎ,もめごと」とありました。good kick backとあるので「良い騒ぎ」と直訳風に考えると,意味が良くとれません。最近,行方先生の著書『英語のこころを読む』を読んでいるのですが,そこで多く取り上げられているのが「皮肉」です。この「皮肉」を理解できないと英文が理解できないと行方先生は書かれていました。
今回の英文もこの「皮肉」の要素が入っています。ハリーにとっては「騒ぎ」でも,ロンにとってはどうでしょうか。この二人の関係とgoodのニュアンスを考慮に入れて,上記の英文を訳すと「あぁ,ロンに君にとっておいしいニュースがはいったよ」ぐらいが適当でしょうか。
「英文のこころ」を読み解ける日が来るまで,毎日真摯に英語と向き合っていきたいと思います。(ゼミ生 persimmon柿生)