常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

『オセロー』の観劇(感激)

ブログに執筆することを勧めて下さった田邉祐司先生のお心遣いに厚くお礼を申し上げます。ウィリアム・シェイクスピアの演劇の感想を私のような者が書くことで、ブログに参加させていただきありがとうございます。
         
2010年5月21日聖心女子大学にて催されたウィリアム・シェイクスピアの『オセロー』の催し「Echoes of Othello」にて、気付いた点などいくつか報告をしたいと思います。「Echoes of Othello」の第二部International Theatre Company London (以下ITCL)による『オセロー』の公演について、書きたいことや発見したことなど山ほどありますが、とてつもなく長くなるので、第二部全体の感想を少し載せます。
        
なお、演劇を見終わった夜に書いたものなので、乱文ではありますが、どうかお許しください。《以下原文まま》
《中略》
例えば、オリヴァー・パーカー版『オセロー』ではオセローの黒とデズデモーナ、キャシオーの白のコントラストを徹底して描くことで、作品におけるオセローの異質さを強調している。同じようにInternational Theatre Company London (以下ITCL)が上演した劇『オセロー』では、オセローの俳優は黒人を起用しており、パーカー版の『オセロー』のように黒と白のコントラストを描いている。さらに、他の点においてもオセローの人種の異質さに新しい解釈や工夫などを見出すことができるのだ。では、そのほかの点でみられる『オセロー』の解釈は、特に3幕3場におけるイアーゴの陰謀はどのように工夫され行われているのだろうか。
 3幕3場のイアーゴによる陰謀は、オセローの問いにイアーゴが会話を遮断するかのように答え、言葉を重ねることでオセローを怒らせ、その怒りの焦点をデズデモーナとキャシオーの不貞という嘘だけに向けるように仕向けているのだ。つまり、ITCL版『オセロー』のイアーゴの陰謀の要は、イアーゴはオセローの怒りの感情を動かすことであると推測される。このことにより、オセローはデズデモーナを信用せずにイアーゴの言葉のみを信用するのである。
 ITCL版『オセロー』では、オセローは直情的なムーア人の将軍という解釈を強調して描かれている。このことが特に強調されているシーンは、デズデモーナを怒りから頬を叩くことや、キャシオーを副官の座から退かせる時の決断のあまりの早さなどである。これらのシーンで強調される行動において観客は感じるのは、将軍の英断などではない。部下の陰謀に巻き込まれても説明のつく単純なムーア人である。このように単純化された人格としてオセローを描かれているため、ITCL版『オセロー』ではイアーゴがオセローの怒りを操作し陰謀を企てることが可能なのだ。
《中略》

 つまり、オセローを単純に描くことで観客にオセローは騙されても仕方がない存在にし、それを強調するためのオセローの怒りが陰謀のかぎとなっているといえるのだ。
と、“As You Like It”ならぬ“As I Write It”と勢いで書いたしまった文章です。とくに、この劇の舞台ヴェニスでは、オセローは有能な軍人として必要な存在で、イアーゴの反発はその体制に反発であることが確認できたことは非常に有意義な演劇であったと思います。オセローのヴェニスと異邦人の対比や家庭人と軍人の対比は、アイロニカルに描かれ、そこから考えられるオセローの異質さは、ITCL版『オセロー』でも変化をつけながら描かれていまいした。
3幕3場で有名な台詞には、以前このブログでも書いてありました、“the green-eyed monster”の台詞がありますね。
IAGO O beware, my lord, of jealousy!
It is the green-eyed monster which doth mock
The meat it feeds on. That cuckold lives in bliss
Who, certain of his fate, loves not his wronger;
But O, what damnéd minutes tells he o’er,
Who dotes yet doubts, suspects yet soundly loves! (3.3. 168-173, underlines mine)
 この台詞についてはたくさん書きたいことがありますが長くなるので割愛しますね。
二つ目の下線の’cuckold’という言葉も調べてみると面白いですよ。
寝取られ男には角が生える〜。角が生えないように気をつけなくては!
長文ですが、読んでいただきありがとうございました。Sweets to the sweet, farewell.