常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

A homespun elixir

THE DAILY YOMIURI(2010年5月27日付け)のBUSINESS FOCUSに興味深い見出しがありました。少子高齢化社会が深刻化している日本社会では今,医療機関だけでなく医療薬品市場の活性化も求められています。しかし,活性化どころか,逆に衰退し始めているのが現状。それを伝えているのが以下の見出しです。
A homespun elixir
With growth limited at home, Japan’s pharma industry is buying firms abroad
とありました。さて,これは何を意味しているのでしょうか。辞書で早速homespunを調べてみますと,「素朴な;あか抜けしない;〈考えなどが〉ありふれた,素人の」と載っていました(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。また同辞書には,elixirは「《文》1(不老長寿の)霊薬(〜of life);酒類 2(一般的に)万能薬(cure-all)《◆比喩的にも用いる》」と明記されています(万能薬という単語はelixir以外にもpanaceaやcure-allなどがあります)。
以上から,国内での成長があまり望めないために,日本の製薬会社がこぞって海外の医療薬品を買い占めていて,それがいかにも素人考えだという筆者の主張にも似た思いが伝わってきます。
ちなみに,そもそも日本製薬企業が苦戦を強いられている要因は2つ考えられます。
1つ目が薬事法の改正による規制です。法改正により登録販売制度などが導入されました。これにより,消費者が薬を自由に選べる幅は狭まりました。選択の幅が狭くなるということは,医薬品市場の縮小に直結しかねません。
2つ目が海外で生産されたジェネリック医薬品の台頭です。ジェネリック医薬品とは,特許の切れた薬品などを,同じ成分・効果で売り出される少し定価より安い薬のことです。これは,日本の医薬品業界の脅威になります。国内の医療会社が外国の医薬品を買っているのはこれが深く関係しています。
このような要因を踏まえ,筆者は最後にとても悲観的な結論を述べています。
Alas, no miracle pill exists to help Japanese executives magically manage a global workforce of vastly different cultures.
グローバル化が一層進み,医療の技術革新は日進月歩です。製薬会社が置かれている厳しい状況にうまく効く「万能薬」あるのでしょうか。日本だけが国際社会で取り残されるという事態は避けなければなりません。国際社会を生き抜くためにも英語学習は避けられませんね。(ゼミ生 camel)