常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

質問#20「でも,って言うな」に挑戦

田邉祐司先生の問いかけ#20に頑張って挑みます。質問内容をおさらいします。田邉先生が10号館で「でも,って言うな」という男女の会話を耳にした際,ふと“but me no buts”というフレーズが頭をよぎったそうです。その後Mark Twainの小説にも“Nay, but me no buts, offer me no objections.”などといった表現が使われていると教えていただきました。課題はこのフレーズを流行りの言い方で訳しなさいというものです。
このフレーズ内にある2つのbutをどのように解釈すればいいのか困ります。通常接続説であるbutの後に直接に“I”の目的格meが来ているのは疑問ですし,butの語尾に複数形と見られる“s”が付いているのも不可解です。辞書でbutを調べてみますと,butには接続詞以外にも動詞形が存在することがわかりました。『ジーニアス英和辞典』(第4版,大修館書店)によると,「〈人〉に[しかし]という|But me no buts. 《文・まれ》何回もしかし,しかしと言うのはやめてください;もう議論[弁論]はよしてください《◆最初のbutは動詞,後のbutは名詞》」と明記されていました。二重括弧内の説明で文法構造は理解できましたが,ジーニアスにあった訳では少し古めかしく,大学生が普段使うような言葉遣いではありません。訳を考え直す必要があります。通例「しかし」の後は相手の意見を論破しようとしていることが推測できます。ずっと相手の意見を押しつけられたら聞かせられている本人は当然疲れますよね。そんな時きっと,
「押しつけ[理屈]がましい。私の事聞いてよ」
などと言うことはできませんか。以上はあくまでも自分の試(私)訳ですが,今の若い人でも使いそうな言葉だと思います。使う人の年齢や性別,場所,状況によって言葉の伝わり方は異なります。辞書訳や字面のみの訳出は危険だと言うことがよくわかりました。文脈を最大限活かした訳出を心掛けていきたいと思います。(ゼミ生 camel)