常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

英語のオロチ退治

ジャイアンツの強さは今年も健在!選手個人の能力の高さとその層の厚さで,他球団を圧倒するチームは,プロ野球セントラル・リーグ4連覇に向け首位をひた走る。
4月29日の中日ドラゴンズとの一戦。ジャイアンツの先発,東野峻投手は,7回2アウトまで無失点ピッチングと,中日打線を手玉にとった。そんな東野投手の活躍をTHE DAILY YOMIURI(2010年4月30日付け)の記事では以下のように表現しています。

 Tono picks up 5th win as Giants slay Dragons

この見出しの注目はas以下のGiants slay Dragonsです。Dragons戦で,なぜかよく使われるのがこのslay。『ジーニアス英和辞典』(第4版, 大修館書店)で引いてみますと,「《やや古》…を退治する」とありました。また,《killの遠回し語として新聞で用いられる》とも記述されており,slayの持つ意味の強さが感じられます。その意味だけで納得してしまった私に田邉先生が一言,
「slay Dragonsとは何か?」
表面的にだけ理解していた私には,slayがここで用いられた意図が直ぐに分かりませんでした。
(まったくお恥ずかしい事ですが)そこには,ある歴史的伝説が背景にあったのです。Dragon slayerという言葉をご存じでしょうか。イングランド守護聖人,聖ジョージが竜を退治し,王女Sabraを救ったという伝説。これを読者に連想させていたのです。(日本云えば,出雲国で素須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を斬ったという話でしょうか。)
対戦相手が中日Dragonsだからこそslayがぴったりとはまるのです。この記事も4/29の拙稿’re-grill’と同様に,時と場合を考慮した語彙がそこにはありました。英語学習は文法や音声だけではない,歴史的・文化的背景も知識として「孕む(はらむ)」ことが大切なのだと実感させられる見出しでした。(by gacha)