常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Gaffe of the Century?

QRのgachaで〜す。holidaysの初日をゼミ長に続いて,わたしも飾ります。

5月6日の総選挙投票を控えた英国。終盤戦は有権者周りを全面に押しだし,何とか乗り切る作戦に出たブラウン首相。そのキャンペーンの一環で,マンチェスター郊外の労働党の熱烈支持者と対話した後,首相専用車(Jaguar)の後部座席に「よいしょ」と腰変かけたところでこの出来事が起きました。TV中継用のピンマイクがついたままだったことを忘れ,思わぬ本音を漏らしてしまい,それが全英,いや全世界のメディアに流れてしまったのです。メディアはこぞってこの世紀の失言をとりあげはじめています。さて,そのマイクが拾った言葉とは?
"That was a disaster,…"
disasterは当然,「災害」から来た口語表現の比喩。”…something that is very bad or failure, especially this is very annoying or disappointing.”(LDOCE)ここまでは問題ないとしても,その次がいけませんでした。
"Should never have put me with that woman -- whose idea was that?"
こんなこと言わなくてもよかったのにブラウンさん。相手のGillian Duffy(66歳)さんはご婦人(elderly woman),それもlifelongの支持者です。この構文,主語は省かれているけど,日本人の学習者には「should have+ 過去分詞」として,おなじみのもの。ポイントはその構文の中味。”put me with that woman”,一国のリーダーがこの支持者との対話を仕掛けた人を非難しているのです。さらに輪をかけていけないのが”that woman”。「あの女」と訳してもその機能は伝わると思います。this woman,that womanという指示代名詞は,本人の目の前であろうと,なかろうと(事実上,放送されたのだから,目の前と同じ効果),注意すべき表現です。
そしてとどめの一発が;
"She was just a sort of bigoted woman."
bigotedの説明の必要はないでしょう。”having such strong opinions about a group of people that you are unwilling to listen anyone else’s opinions”(LDOCE)。
ブラウン首相,ラジオ番組中に自分の独り言を聞かされ,Duffyさんの自宅へ謝罪するという異例の行動に打って出たのです。さらに自らを”penitent sinner”と呼び,謝罪会見も行いました。しかし,The damage’s done。メディアはこぞって,このgaffeに飛びつきました。以下の大衆紙「サン」の批判はすざましいの一言です。
"This was the authentic Gordon Brown -- thin-skinned, paranoid and perpetually on the hunt for someone else to blame..."
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/
対岸,否,西の端(Far West)のお話ではありますが,話し言葉(spoken Language)でその人の運命が決まることもあるお国の文化を如実に伝える出来事です。あっー,開票結果が待ち遠しい。(by gacha)