常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

日曜夕方6時 NHK教育テレビ 「ハーバード白熱教室」

日曜夕方6時からNHK教育テレビで放送されている「ハーバード白熱教室」という番組があります。これは先日,田邉先生から教えていただいたもので,Harvard大学で最も人気のある講義の一つ,Michael Sandel教授の「政治哲学」(原題は"Justice")の講義を吹き替え音声付きで放送したものです。ちなみにHarvard大学が講義をメディア公開するのはこれが初めて。詳しい内容に関してはここでは触れませんが,2つの点で特に印象を受けました。

1. 身近な例とわかりやすい説明
「哲学」と聞くと,それだけで身構えてしまったり,拒否反応を示す人が多いのではないでしょうか。このことは講義の中で教授自身も触れています。しかし,教授は「普段当たり前に思っていることをもう一度考え直す」という「哲学」を学ぶ目的を明確にした上で,難しい言葉や表現は一切使わずに,それどころか身近な例を挙げ,誰にでもわかるような説明をし,講義を進めていきます。目的を示し,難しい内容を簡単に説明する,教師になるなら常に心がけておきたいことですね。

2. 「まなざしの交差」
番組を見てまずに目に入るのが講堂に詰めかけた1000人を超える学生。しかも,そこには教師と学生とプロジェクターが1台あるだけ。これで授業が成立していること自体が奇跡です。しかし,Sandel教授の講義はいわゆる一方通行型のそれとは異なります。教授は学生に問いを投げかけ,考えさせ,そして時には学生同士で議論させます。学生は自らすすんで意見を言い(もちろん英語圏の「もの言う」文化が大きく関係していることは否定できませんが),みなが講義に引き込まれていきます。その様子からは田邉先生のよく言われる「まなざしの交差」(cf. 吉本 均『授業をつくる教授学キーワード』明治図書)そのものを見ることが出来るように思います。
また,これは本で読んだだけですが,(これも以前田邉先生に紹介していただいた)林 竹二先生(元宮城教育大学学長)の出前授業もおそらくはこの講義に近い形式だったのではないかと見ていて感じました(cf. 林 竹二『教えるということ』国土社)。

この他にも,Sandel教授の講義からは教員を目指すものとして,多くのことを学ぶことができます。You Tubeでも見られますので(こちらは吹き替えなしです),是非見てみてください。

http://www.youtube.com/watch?v=kBdfcR-8hEY

(院生 小山本)