常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Thank you 復習

 卒業研究の一部です。

“Thank you.” (『トランスペアレント シーズン2』第2話 2015年,アメリカ)

<解説>
 「ありがとう。」という意味で広く知られている “Thank you.”であるが,使い方によっては全く異なる意味を持つ場合がある。 
 長女Sarahは元夫と親権について弁護士と話し合う場面で、元夫は子供がとても傷ついていることを主張した。その際に“Thank you.”とSarahに言ったのである。
 このシリアスなシーンでSarahに感謝を伝えることは考えにくい。さらに台詞の言い方に気持ちなどこもっていなかったため,他のニュアンスを含んでいるのではないかと考えられる。
 『ジーニアス和英辞典』を引いてみると,「(皮肉を込めて)〈人〉のせいである」という意味が載っている。例として以下の文が書かれている。
(例)“I can thank him for giving me trouble.”
   「苦労をさせてもらっているのは彼のおかげだ。」(頁
 またOxford IDIOMS Dictionary for learners of English (Second Edition Reserved, Oxford University Press)に, “I’ll thank you (not) to do sth.”や “I’ll thank you for sth/for doing sth.”といった言い方を紹介したうえで, “used when you are angry or annoyed, to ask sb in a formal way (not) to do sth”という説明があった。
(例)“I’ll thank you not to interfere in my personal affairs.”
   「もう私のことにかかわらないでちょうだい。」
 以上二つの引用から分かるように,皮肉や相手にやめてほしい意を伝える際に用いられることがある。決して感謝の意などをつたえるポジティブな意味だけを持つ言葉ではないのでる。
 このシーンでは,「(子供たちが傷ついているのは)お前のせいだ。」と憎しみを込めて用いられている。(Gomez)
cf. 『1日3分 脱日本人英語』