常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

read my lips 復習

だいぶ前の表現で女性の化粧品メーカーに関する話題が絡んでいる記事ですが,取り上げたい表現がありますのでアップいたします。

アベノミクス」で最初は元気であった化粧品業界も,今はアベノミクスの効力が薄れ,前まで当たり前の様に買われていた口紅などの化粧品が(今では値段が高いとみなされているからでしょうか),買われなくなりました。化粧品メーカーは,化粧品の質にこだわるなど,様々な工夫をしているようです。

Read my lips: Abenomics is losing its gloss

Lipstick shades are kissing off Japan's short-lived economic recovery, and fashion industry hues are turning as somber as a central banker after another ineffectual splurge of money printing.

http://www.reuters.com/article/us-japan-economy-lipstick-idUSKCN0W92HP

今回は,Read my lipsを取り上げます。『クラウン英語イディオム辞典』(三省堂)によると,「⦅米口⦆(私の言うことを)注意して聞きなさい,私の言葉を信じなさい」(“spoken used to tell someone that you really mean what you are saying”-- LDOCE5)という意味です。同イディオム辞典では,この表現「☞元米国大統領George Herbert Walker Bushが選挙キャンペーンに用いた“Read my lips: no new taxes.”『信じてほしい. 新税は導入しないから』から」とありました。この演説からこの表現が流行ったということが読み取れます。

この見出しは,ブッシュ(父)元米国大統領の名演説の一節のもじりです。「アベノミクス」という経済政策に伴い,「好景気になる」ための「三本の矢」を立てましたが,その政策もむなしく見事に崩壊。当時のブッシュ(父)陣営も,「もう新税は無い」と高らかに宣言しながらも,公約が果たされませんでした。「アベノミクス」という政策を,当時のブッシュ(父)元米国大統領の演説風になぞらえたのでしょう。

話は変わりますが,この表現で使われているlipと,唇」,「リップクリーム,リップスティック」のlipと掛けられております。因みに,引用されている箇所を見ると,化粧品,あるいは唇に関係する語が並んでおります。まず,lipは先ほど言及しましたので,割愛します。次にlosing its glossは,この場合,「勢いがなくなっている」ということです。また,口紅の上に塗る「グロス」と掛けられております。見出しのRead my lipsと合わせると,化粧品に携わる方々の苦労などが窺えます。二番目のkiss offもそれらを想起させそうな表現です。『クラウン英語句動詞辞典』(三省堂)には,「…を拒絶する,無視する,追い払う」とありました。この場合は,「キス」と掛けられております。(Kawada)

https://www.youtube.com/watch?v=RZtaZTEO3jA