常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

bunker down

中国の首都北京では重度の大気汚染が続き、そのレベルが最も重い「赤色警報」が初めて発令されました。これを受けて工場が操業停止になったり、保育園や学校が休校になったりと過去最悪の状況となっています。

In another corner of Beijing, a university lecturer, Wang Bei, was bunkered down at home with her 10-year-old son. “Air pollution is a huge problem that we ignored early on, while we concentrated on economic development,” she said. “Now we are paying the price for that. It only takes a second for someone to fall gravely ill, but it takes a long time to recover. Now China is that ill person trying to recover from air pollution.”

http://www.nytimes.com/2015/12/09/world/asia/beijing-smog-pollution.html?ref=world&_r=0

取り上げる表現は“bunker down”です。まず、“bunker”を『ジーニアス英和辞典第4版(大修館書店)』で調べると、名詞では「(頑丈に造られた)避難所」や「《ゴルフ》バンカー」、動詞では「…を窮地に陥れる」などという意味がありました。
しかし、”bunker down”という表現の定義は見当たらず、代わりに“hunker down”という表現を見つけました。これは「しゃがむ」「(困難な事態が終わるのを)沈黙して待つ、身をひそめる」という意味があり、記事の意味にぴったりと当てはまります。

インターネットで“bunker down”と“hunker down”について書かれているサイトをいくつか見たところ、辞書の定義はないものの、“hunker down”の意味で“bunker down”を使うことが頻繁にあるそうです。また、その理由もはっきりとは分かっていないようですが、ある言語学者によると、これはeggcorn (「変に聞こえるけれども、発音がその言葉であると認識できて意味も通じる言葉」)の一種ではないかと言われています。“bunker down”の意味を“A bunker is a place you hunker down in to protect yourself”と定義した言語学者もいます。
言葉というのは常に変わり続けており、辞書が全てではないことを実感しました。(bookmark)

参考サイト
http://www.grammarphobia.com/blog/2015/05/hunker-bunker.html

eggcornに関する過去のブログ
http://d.hatena.ne.jp/A30/20130307/1362584185