常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

fair governance 回答

投資銀行」の説明なので,ご存知の方は2段落読み飛ばして下さい
 ご指名を頂きましたので回答させていただきます。日本が,アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を見送った件についてですね。AIIBは中国が主導する投資銀行で,当初はアジア諸国の参加が目立ちましたが,最近イギリスが参加したことが話題になったようにヨーロッパ諸国も名乗りをあげております。用語で気をつけなければならないのは「投資銀行」という言葉です。投資銀行は,直接融資を行わずに,融資を受けることを望んでいる企業と融資することを望んでいる企業を結びつける役割があります。つまり,法人に対する仲介業務を行っていると言えます。
 一方,AIIBの場合は,銀行が有する資金で融資を行います。詳しく調べられませんでしたが,投資対象はアジアのインフラだとおもいます。道路,橋,港などといったインフラを建造するには莫大な資金が必要です。建設に必要な資金を融資するのがAIIBの役割です。今後成長が見込まれるけど現時点では投資を行うお金がない国に,お金を貸してあげるということです。

 前振りが長くなりましたが,このお金を貸してあげることに"fair governance"という用語が関わります。お金を貸すということは返済されることが前提です。融資を行う場合,返済能力について厳格な査定を行います。麻生副総理は"the need ・・・properly assesses specific projects"とのべているのがそれに当たります。この厳格な査定を担保するのが"fair governance"「公平なガバナンス」です。"governance"は「(国家などの)統治,(組織などの)運営,管理」などと訳されます(『Wisdom英和辞典第三版』(三省堂))。麻生氏はAIIBには,「公平な運営」体制が不透明であると述べたのです。
 きっちり審査をしなかったり,知り合いだからといった理由で融資を行っていれば貸したお金が返ってこない場合があります。中国では,この一年で不良債権の比率が36%も増加したとあります。その原因には,明確な審査基準がなかったこともあると考えられます。「不透明な運営」を行っているとお金を回収できなくなる危険性があるのです。(Ume)

Ministers: Japan won't join AIIB for now

Finance Minister Taro Aso has reiterated that Japan will not join the China-proposed Asian Infrastructure Investment Bank, or AIIB, for the time being.



Aso told reporters on Tuesday morning that participating in the proposed bank is conditional on fair governance. He cited the need for having a board of directors from member nations that properly assesses specific projects and considers their impact on the environment and relevant societies before approving them.



Aso said Japan cannot but be careful about joining the bank until such points are addressed. His remarks are taken to indicate that Japan believes China has failed so far to fully clarify these issues.

Economic and Fiscal Policy Minister Akira Amari also said Japan will not be joining for the time being.

http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/english/news/20150331_18.html

中国4大銀の減速鮮明に 14年12月期、不良債権36%増 :日本経済新聞

 今回は厳格な査定を担保することを"fair governance"と書きましたが,本来はもっと広い意味合いがあります。例えば,経済産業省では,ガバナンスを「企業経営を規律するための仕組み」としております。会社法では,ガバナンスに必要な機関の役割を明確に定義しております。会社を経営するのは取締役ですが,彼らを監視する役割として監査役株主総会などがあります。

http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1009638_po_050713kigyokodo.pdf?contentNo=1&alternativeNo=p.28.
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