常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

"Galapagosization"

 UG先生に頂いた話題です。近年巷では,「ガラパゴス化」という用語をよく聞くようになりました。なんとなく意味は分かるのですが,自分の勉強のためにも整理してみたいと思います。ガラパゴス化とは「日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である」とあります(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140902-00000020-economic-bus_all)。つまり和製英語です。


特定の市場の中で最適化を目指すと,外部からの圧力に敗れてしまうということだと思います。少し意味合いは異なりますが,クリステンセンの有名な著書『イノベーションのジレンマ』と似ていると思いました。彼の理論は,市場を支配している企業が,その市場のニーズだけに合わせて製品を改良し続けていると,他の市場ニーズを取り組むことが出来ず,最終的に新規参入や外部から現れた企業に敗れてしまうというものです。

http://d.hatena.ne.jp/kanose/20071227/cellularphonegalapagos

上のサイトによると,ガラパゴス化という言葉が現れたのは2006年であるようです。日本の携帯電話に対する比喩として使われたのですね。その後も,様々な業種について「ガラパゴス化」という表現が用いられてきました。例えば,自動車業界では,「HVの開発に注力してきた日本の自動車メーカーの姿勢に対する懸念は以前からあった。みずほコーポレート銀行は「20年に中国市場の3分の1がエコカーになるが、最も普及する技術はHVでもEVでもない。ガソリンエンジンの小型化で燃費を改善する『ダウンサイジング』と呼ばれる簡素な技術が主役になる」と予想していた。・・・当初、中国では日本のハイブリッド車技術の導入も検討された。しかし、仕組みが複雑すぎるうえ、技術流出を恐れる日本勢も慎重になり、結局は立ち消えとなった。そこに売り込みをかけたのがドイツ・フォルクスワーゲンだ。従来のエンジンを小型化し、ターボチャージャーを組み合わせてハイブリッド車並みの走りと燃費を実現した。コストも格段に安くてすむ。フォルクスワーゲンのダウンサイジング技術は9年連続で「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー アワード」を受賞。世界中から高い評価を得ている。15年は日米欧でも燃費規制が強化され、技術が世界で一変する年だ。市場の中心が新興国に変わりつつある。技術で先行しても市場は奪われる。そんな苦い経験を日本企業は携帯電話で味わった。攻め方を誤れば「最後の砦」となった自動車産業でもガラパゴス化の懸念はある。日本勢はHV技術だけではマーケットの主導権を握れないと判断したのかも知れない(編集担当:久保田雄城)」という論説がありました(EconomicNews(エコノミックニュース))。日本が誇るHV技術ではなくターボ付きのダウンサイズされたガソリン(ディーゼル)車の燃費向上がエコカー市場の覇権を握るというものです。

 ガラパゴス化について,上記のように否定的な見解がある一方で,メリットも多く指摘されております。要約すると,差別化の能力を向上できる,国際標準は常に変化していくため常に世界に合わせても無駄である,国内市場でも技術力を高めていける,等々です。
「新氷河期世代」のつぶやき - ガラパゴス化は別に悪者じゃない。
ガラパゴス化って、そんなに悪いことじゃないのだが: tak shonai's "Today's Crack" (今日の一撃)
第1回・ガラパゴス化は本当に悪いのか? | 日経 xTECH(クロステック)
 製品がコモディティ化して,コストを低減していくだけでは競争優位を持続できなくなってきました。コモディティ化を防ぐためにも,独自の技術を磨いて,他社が模倣できないような製品を生み出していくことが大切であると思います。「ガラパゴス化」が問題なのは,自国の市場に閉じこもってしまい,国外市場に,製品を発信していかないことであると思います。この外部に発信していく力として英語が不可欠であると感じました(Ume)。