常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

whiter tales(回答)

記事のチェックが甘くUG先生からのご指名を見逃していました。第86回アメリアカデミー賞で作品賞を受賞したスティーブ・マックイーン監督の映画「それでも夜は明ける」。今回のお題はこの映画について書かれた記事にあったwhiter talesという表現です。
cf. http://d.hatena.ne.jp/A30/20140303/1393849190

恥ずかしながら「それでも夜は明ける」という映画自体について私には全く知識がありませんでしたので,まずは映画について調べてみました。アメリカで実際に起きた事件をもとに製作されたこの映画は,ある日突然誘拐されて以来12年間にわたって奴隷生活を強いられた黒人音楽家ソロモン・ノーサップの人生を描いたもの。そして,この映画が注目されている理由について「シネマトゥデイ」で映画評論家町山智浩氏は以下のように分析しています。

町山は「南北戦争奴隷解放から来年で150年。ちょうど節目の年にあたるからでしょう」と本作の注目理由を分析。「どの国にも触れられたくない歴史があるけど、アメリカの奴隷制度はその中のひとつ。ハリウッドは100年も歴史がありながら、奴隷農場を描いた作品はほとんどない。この映画は『マンディンゴ』と『ジャンゴ 繋がれざる者』に続いて、ハリウッド史上3番目にきちんと奴隷農場を描いた映画」と絶賛。

cf. http://www.cinematoday.jp/page/N0061065

ここで忘れてないはいけないのが今回の記事にもlike 1940 best-picture winner "Gone With the Wind."とあるように「風とともに去りぬ」が南北戦争と黒人奴隷農場を背景にした作品であること。以上から推察してこのwhiter talesのwhiteは「白色人種の(ための)」(『プログレッシブ英和中辞典』小学館)という意味だと考えられます。なお,同辞書にはa white neighborhood(白人専住区域)という用例が挙げられていました。つまりwhiter talesというのは「白人中心の視点から製作された(裏を返せば黒人奴隷制度を描いた)物語」と解釈できます。(Koyamamoto)