常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

mens sana in corpore sano #2

本来なら某高校の研究報告会があったはずなのですが、台風のため延期となりました(賢明なご判断!)。

しかし家にいるならいるで、おいそれとは休ませてはもらえないのが父親のつらいところ。朝は息子をしっかりと駅まで送り、家族サービス。

その帰り道に聞いた「TBSラジオ 土曜朝イチエンタ。堀尾正明+PLUS!」(長いタイトル!)の「大宅映子の辛口コラム ジャーナリスト・大宅映子が今週のニュースを斬る!」(これまた長い!)では、2020東京オリンピック開催地決定に関連した英国人のコラム「日本人とスポーツ」(題名は忘却)(NewsWeek 日本語版)を取り上げていました。

番組で女史は「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」と述べていましたが、この「定訳」(?)はラテン語の訳が短く解釈され、人口に膾炙してしまった有名な例です。

由来はユウェナリス(Decimus Junius Juvenalis)の『風刺詩集』から。orandum est, ut sit mens sana in corpore sanoがその箇所で、後半部のmens sana in corpore sanoが切り取られ、ここがA sound mind in a sound body.と訳され、そのまま広まったものです。

しかしながら、原文を忠実に英語にすると、You should pray for a sound mind in a sound body.と置き換えることが可能なので、「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」といった「断定的な言い方」ではちょっと作者の意図とは違ってきます。「そうなるように祈る、のぞむ」という祈り、願望のような文言が加えられるとよりユウェナリスの意図に沿う形になるはずです。

日本の英和辞書で、正確な定義を掲載したのは、確か三省堂の『グローバル英和』が最初だったと記憶しています。そして、編集部にその情報を送った主こそ、私が高校教員時代に鍛えてもらったBen先生その人だったのです。

ちなみに(蛇足ながら)、CI(corporate identity)運動が盛んになりたての頃(1970年代後半?)、スポーツウェア・用具メーカーのアシックス(ASICS)はmens sana in corpore sanoのmensをanima(生命)に入れ替えて(その理由は忘れました。新聞の夕刊に書いてありましたが、記事を紛失!)、その頭文字を同社の社名としたのはスマートな選択でした。同社の旧名はオニツカ(タイガー)だったと思います。これは授業ネタとして使っています。

ラジオを聞きながら、山口時代が懐かしくなりました。「思えば遠くに来たもんだ。」(UG)

http://d.hatena.ne.jp/A30/20100609/1276074689

http://d.hatena.ne.jp/A30/20130716/1373928883