常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

学会のお知らせ

時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。下記のとおり、今年度の研究発表大会・総会を開催いたしますので、多数ご参集くださいますようご案内申し上げます。

広島大学英語教育学会 会長  三浦省五

1. 主催: 広島大学英語教育学会
2. 日時: 2013年7月27日(土) 午後12時30分〜午後6時10分(正午受付開始)
 開会時間が当初の予定より早くなりましたのでご注意ください。
 翌28日(日)には広島大学英語文化教育学会が開催されます。
3. 場所: 広島大学教育学部 第3・第4会議室(広島県東広島市鏡山 1-1-1)
 東広島キャンパスまでのアクセス
http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/access/higashihiroshima/
 キャンパスマップ
http://www.hiroshima-u.ac.jp/add_html/access/ja/saijyo2.html
 西条駅からのバス時刻表
http://www.geiyo.co.jp/Unyu/daigakuH25-3.htm

4. プログラム概要:
(11:30-12:30:運営委員会)
12:00-12:30:受付
12:30-13:00:開会行事・総会(※開会時間が当初の予定より早くなりましたのでご注意ください。)
13:10-13:40:研究発表(1)
13:45-14:45:研究発表(2)
14:50-15:50:実践報告
16:00-18:00:特別講演
18:00-18:10:閉会行事
18:30-20:30:懇親会:ラ・ボエーム広島大学学士会館1F)

5. 特別講演:
「Teach, Learn, Use の結びつき — Can use を支える最も重要な能力は何か —」
青木昭六先生(兵庫教育大学名誉教授)
‘Teach’ ‘Learn’ ‘Use’ は一筋縄では結びつかない。しかし、それぞれを橋渡しするmaneuversの余地はあるはずである。ここでは、主として、‘Learn’ と ‘Use’ の媒体として必要な ‘Learn to use’ の特質を考察し、言語使用(use)を支える必須の能力とは何かについて私見を述べる。

6. 研究発表・実践報告要旨:
研究発表(1) 「大学の英語授業における協同学習の在り方」
加藤由崇(京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻)
近年、英語教育において協同学習への関心が高まっている。学習者による主体的な授業参加を促す協同学習は、「学習者が何を学んだか」が重視される近年の大学の英語授業において、有効な指導法の一つだと考えられる。しかしながら、従来の英語教育における協同学習の研究や実践報告の多くは、(a)米国発祥の比較的制約の多い定義に依拠するものが多く、(b)指導の効果が、言語技能の向上ではなく、学習者の心理的側面に重点を置いて議論されることが少なくなかった。そこで本研究ではまず、従来の定義を再考し、特にOxford (1997)をもとに日本の英語教育における柔軟な協同学習の在り方を検討する。その後、教育学や学習科学における知見を援用し、協同学習成功の可否に関わり得る要因を整理することで、「いつどのような」場面での協同が学習者の言語技能伸長に寄与するかを解明する今後の実証研究にむけ、一つの理論的枠組みを提案したい。

研究発表(2) 「公教育としての英語教育再規定
— 日本語使用排斥論に潜む資本主義への過剰適応への批判から —」
柳瀬陽介(広島大学大学院教育学研究科)
現在、日本の英語教育では日本語使用を一律的に排斥する論が強まっている。本発表は、帝国主義新自由主義と貨幣・資本の観点から英語教育史を概観した上で、この日本語使用排斥論に潜む資本主義への過剰適応性を指摘し、英語教育における日本語使用を、起点言語/終点言語、口頭言語/書記言語、語句文/文章全体という三つの観点から整理する。この整理は、一律的な日本語使用排斥論の「愚かさ」の理解と、これからの日本の言語教育・言語政策の総合的考察への一助となることが期待される。さらに本発表は、現在の英語教育改革論が国有の教育の私有化を志向しそれを多くの政治権力者が肯定・推進していることにより、英語教育の公教育性が損なわれつつあることを指摘する。日本の公教育としての英語教育は、資本主義への過剰適応に支配されることなく、日本語も英語も、国有財産や私有財産と考えるのではなく、世界市民にとっての共有財産としてとらえた上で、複合的に教育するべきことを提言する。

実践報告 「Paravocal Cues:音声と意味とをつなぐ音声指導の一視点」
田邉祐司(専修大学文学部)
本発表では「音声と意味のつながり」を中心に、「音(おと)」ではなく「音(おん)」としての英語指導・学習のあり方について私見を述べさせていただきます。
音声指導でわれわれは、「気持ちを込めて発音してみよう」「その人になったつもりで発音してみよう」や「話し手の意図を推測しながら聞こう」などの指示を出し、学習者に、意味を踏まえた音声の出力、入力を促しますが、促すだけで終わることが多いのが現状です。やがて学年進行とともに、彼らが発する声も次第に小さくなり、学習者の音声練習も形式的、機械的になってしまう傾向があります。
以上から、学習者の気づきをどのように起こし、高めることができるのかということに関するひとつの視点として、音声学でいう Paravocal Cues、コミュニケーション学の Paravocalics の考え方を援用した音声指導の中からいくつかの指導例を報告しようと思います。