常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

教育実習報告#7

教育実習報告レポート

6月3日〜21日までの3週間、母校の高等学校にて教育実習をさせていただきました。担当させていただいたのは、2年生の英語の基礎クラス(英語に苦手意識を持つ生徒たちのためのクラス)です。

<実習校の実態>
今年の1年生から新カリキュラムが導入され、英語での授業が行われている。しかし私が担当する2年生に対しては、全て日本語で授業が行われている。

<大変だったこと>
授業のスタイルを確立する
指導教諭から「自分の好きなように授業をしてみなさい」と言われ、どのように授業を展開してゆくか悩んだ。具体的には、これまで通り日本語で授業を行うか、新カリキュラム導入に合わせて英語で授業を行うか、ということで悩んだ。その結果、「簡単な指示出しは英語で行い、説明は日本語で行う」ことに決めた。しかし、実際に英語での授業を行ってみると、この選択は間違いだったと感じた。理由は、生徒が不安そうな顔をしたこと、日本語で補足説明をするため時間がかかってしまうことが挙げられる。しかし授業のスタイルを再び変えることは生徒にとって負担であると考え、英語での指示出しを続けた。初めはごく簡単な指示出しも日本語での補足が必要であったが、何回か行ううちに、「私の授業のスタイル」ができ上がり、生徒もそれに慣れてくれた。自分の授業スタイルを決め、それを一貫して行うことの重要性を学んだ。

英語が苦手な生徒の「モチベーションを上げる」「理解を深めさせる」を同時に行う
生徒が発言する機会を多く設けようと、発問を多く行った。しかし生徒からの返事は「分かりません。」ばかりだった。中学生の学習内容に関して発問しても、答えは得られなかった。これを受け、発問しながら授業を進めることは不可能だと指導教諭に伝えると、「自分(生徒)が発した言葉は必ず生徒の中に残るから、発問は全員に対して行いなさい」とご指摘いただいた。更に、「答えが得られない場合は、ヒントを出し、生徒から答えを引き出しなさい」とご助言を頂いた。これを実行に移すと、どんなに英語が苦手な生徒からも答えを引き出すことができ、自分でも驚いた。結果として、生徒から「分からないままで終わらせず、答えを導き出してくれたので嬉しかったし、力になった」というコメントを多くもらった。

<心がけたこと>
生徒の英語に対する苦手意識をなくす
自分が受けたいと思う授業をすることである。私が授業に求めるのは、発音が端正な教師から学ぶこと、実践的な活動を行うことの2点である。
田邉先生の「生徒がついてくるか否かは、教師の発音次第だ」というお言葉に共感し、端正な発音で生徒を惹き付けようと決めた。しかし、間違った発音を教えてしまったことがあり、深く反省している。私はこれまで、発音が分からない単語のみ調べていたが、授業で使う単語は全て発音を調べ直す必要がある。あってはならない間違えをしてしまったが、全体として発音に関しては好評を頂いた。生徒からは、「先生の発音が綺麗で、聞き取りの練習になった」「自分も発音が上手くなりたいと思った」などのコメントをもらった。英語科の先生方からも「発音が綺麗」「オールイングリッシュの授業をするだけの力がある」とお褒めの言葉を頂いた。

私が授業で行った実践的な活動は、「イディオムを使って文を作り、対話する」というものだ。指導教諭の授業ではなされていない、この活動を行わせた理由は、生徒にイディオムを楽しく覚えてもらいたいと考えたからである。しかし初めは上手くゆかなかった。英作文を発表してもらおうと指名すると、「分かりません。」という答えばかりが返ってきた。隣の人と会話する時間を設けても、顔を合わせようともしない生徒が見受けられた。これを受け、私が行ったことは二つある。一つは、「自由に英作文をする」という活動から、「与えられた日本語の文を英文にする」という活動に変えたことだ。その結果、答えを発表してくれる生徒が増えた。また、皆に同じ文を書かせることで、生徒全員の理解度を把握することができた。(自由に英作文をさせると、全員の文を確認することに時間がかかる。)二つ目は、会話文のサンプルを提示し、「このイディオムはこの場面で使用できる」といった具体的なイメージを持てるようにしたことだ。英文を読むだけにならないよう、単語を自由に変えて会話するよう指示した。会話練習をさせている間は机間巡視を行い、会話が進んでいないペアのフォローを行った。また、会話が弾んでいたペアも把握しておき、クラスの前で発表させると、クラスが活気づいた。

<研究授業>
多くの先生方のアドバイスから、どれを授業に取り入れるか取捨選択する
研究授業の前日に、同じ内容の授業を何人かの先生方に見ていただいた。先生方からのご指摘で多かったのは、「教師の説明が長く、生徒が英語を話す機会が少ない」というものであった。しかし反対に、「中学生の学習内容も分からない生徒に対して、説明が多くなることは仕方がない」と言ってくださる先生もいらっしゃった。私は、生徒の活動を多く設けることの重要性を知っており、そのような授業をしたいができない、というジレンマと戦いながら授業を行ってきた。そのため、前者の先生方のご指摘を受け、「明日の研究授業の計画を変更したいです。」と指導教諭に申し出た。すると、「研究授業はこれまでの授業で築き上げてきたものを披露する場であり、上手い授業を見せる場ではない」とご指摘いただいた。そして、先生方から頂いたアドバイスを、明日の研究授業から実行できるものと、長い年月をかけて実行するものとに分けた。具体的には、前者が「簡単なクラスルームイングリッシュを増やす」「丁寧かつ簡潔な説明を行う」「ヒントを与えて、生徒に正解を気づかせる」などである。これらを研究授業で実践すると、指導教諭から「やってきたことのまとめがなされており、合格点である」というお言葉を頂くことができた。今後の課題としては、「教科書の扱い方や生徒へのアプローチの仕方において、自分に合ったものを確立してゆくこと」だとご指摘いただいた。これが、前述した「長い年月をかけて実行する類のアドバイス」である。

<3週間を通して>
英語が苦手な生徒のみが対象ということに、最も苦戦した。英語が得意な生徒がいれば、いざという時にその生徒に発言してもらい、授業を進めることができるが、それができない。発問に対して期待する答えが出てくることは稀で、生徒から答えを引き出す必要があった。また、授業で扱う予定でない文法事項まで説明しなければいけないこともあった。これにはかなりの時間がかかった。しかし当然ながら、テストに合わせて授業を進めなければならないため、「どこまでヒントを出すか」の加減を訓練することができた。また、「何を教えないか」を先に決めて授業を行い、「本日の目玉にしっかりと焦点を当てる」ことが必要だと実感した。
授業の最終日に生徒に書いてもらった授業の感想には、嬉しいコメントがたくさんあった。なかでも「発音が綺麗だから良い授業だった」というコメントを多くもらい、教師は生徒のロールモデルであることに改めて気づかされた。生徒の目標であり続けるため、今後も発音に磨きをかけたい。
また、「英語に対する苦手意識を持っていたけれど、先生の授業で英語に興味を持った」というコメントは涙が出るほど嬉しかった。私の生涯を通しての目標である「英語の魅力を伝えること」を少しは達成できたのではないかと思う。そして、教員になりたいという思いを一層強くした。
貴重な経験をさせていただき、教職員の方々や生徒たちに心から感謝している。しかし、教育実習は教員になるための第一歩に過ぎない。英語を苦手とする生徒だけでなく、英語が得意な生徒、帰国子女などに対応できる力も身に付けねばならない。そして様々なレベルの生徒を一度に対応する力も求められるだろう。
先生方から頂いたご助言や生徒からもらったコメント一つひとつに対して真摯に向き合い、教師の力量を高めたいと思う。(krami)