常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Dice-K 2.0(回答)

指名質問に回答します。今回の質問内容は以下の英文です。
Which isn't to say that Darvish is a lock to succeed should he sign with Texas. But it's certainly good news for Ranger fans.
"There's no such thing as a sure thing. Matsuzaka wasn't a sure thing. Darvish isn't a sure thing," Neyer wrote. "But on scale of non-surety, and based solely on the numbers at hand, Darvish seems significantly less risky than Matsuzaka."
http://d.hatena.ne.jp/A30/
一つ目のWhich isn't to say that Darvish is a lock to succeed should he sign with Texas.ですが,文法の解釈が大事になります。文頭のWhichですが,これは以前の「ダルビッシュは松坂よりも上なのでは」という内容を受けた関係詞です。よく関係詞whichは前文全体を先行詞として捉える事がありますね。lockは「[成功]確実な物(人)」という意味(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。第一義の「錠」からも,堅実に成功するようなニュアンスが感じ取れます。そしてshould he sign with Texasの部分ですが,これは仮定法のshouldが倒置を起こしていると考えられます。この用法のshouldが使われるとき,「仮定の意味合いが強ければ帰結節の動詞(ここではis)は仮定法過去になるが,単なる条件としての文脈では直説法を用いるのが普通」です(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。さらに倒置で仮定の意味合いを表す場合は,「不確かさが大きくなる」とのこと(同上)。レンジャーズと契約については,単純にまだどうなるか分からないという中立的な立場をとっているのでしょう。以上を踏まえると,「日本での成績ではダルビッシュの方が松坂よりも上という事実が,(まだ分からないが)もし彼がレンジャーズを契約したら確実に成功を収めるということを保証しているわけではない」のように解釈出来ます。
二つ目のBut on scale of non-suretyですが,on scale of〜は「〜の評価基準において」という意味(同上),non-suretyは前の部分のThere's no such thing as a sure thing. Matsuzaka wasn't a sure thing. Darvish isn't a sure thingを意識し,not sureという言葉に接頭辞non-と抽象名詞をつくる接尾辞-tyをつけています(『ジーニアス英和大辞典』大修館書店)。ここから,質問箇所は「しかし無絶対性基準では」などと解釈できます。かみ砕くと「しかし、確実に保証できるわけではないが、手元にある数値だけを基準にすると」と訳せますでしょうか。(Sugiuchi)