常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

giant-killing

UG先生とSugiuchi君が,なでしこJAPANの優勝の記事を,アメリカの新聞やニュース・サイトからとっているので,ほかの国の新聞から英語表現を拾いたいと思います。今回とり上げるのは,独自路線でインテリ層に人気とされるイングランドの高級紙The Independentです。さっそく,フットボール大国イングランドでは,どのように報道されているかみてみましょう。
Japan clinch shock World Cup win in shoot-out
Japan's giant-killing Women's World Cup campaign ended in glory with a penalty shoot-out win over traditional powerhouse the United States in the final in Frankfurt last night.
http://www.independent.co.uk/sport/football/international/japan-clinch-shock-world-cup-win-in-shootout-2315567.html
強調箇所では,giant-killing,つまり「(スポーツ選手[チーム]が)大敵をやぶる,大物を食う」(以下,辞書の引用は,すべて『オーレックス英和辞典』旺文社) という意味で使われています。まさに,アメリカという巨大(giant)な敵を倒し(kill),優勝をもぎ取ることができたのです。さらに,見出しのclinch shockという言葉からも,ワールド・カップの優勝を勝ち取った衝撃が伝わります。ここでのclinchは,もちろん格闘技のクリンチのことではなく,「勝利を得る」「勝ち取る」という意味で使われています。
さらに,最初に指摘したgiant-killingについてですが,実は,この言葉が使われたことには,おそらく理由があります。それは,以前の記事でも,今回の記事と同じgiantという言葉が使われていることがあるからだ,と考えられます。日本の決勝進出が決定したあとの,The independenceの記事で,Nadeshiko knows the score: slay the giant and get a watch「日本は,真相を知っている。大敵に勝っても,時計しかもらえないことを・・・」という記事がありました。この見出しでは,強調箇所のようにslay the giantが使われています。このslayは,「1.〜を殺害する 2.〜を圧倒する」などの意味で使われていますから,slay the giantは「大敵を倒す」と訳せます。つまり,まえの記事の見出しで使った言葉を,連続して使うことで,両方の記事に繋がりを持たせ,日本がアメリカという強国に勝った,ということを強調する効果があると思われます。
ちなみに,最初の記事にあるshoot-outとは「PK戦」のことです。また2つ目の記事の見出しにあるknow the scoreとは,口語で「事情(真相)を知っている。裏がわかっている」と言った意味です。日本のようなダーク・ホース的な存在だったチームが優勝にまで上り詰めることは,まさしく衝撃だったことでしょう。間違いなく日本をひとつにしたできごとだと思います。(Othello)
cf. http://www.independent.co.uk/sport/football/international/nadeshiko-know-the-score-slay-the-giant-and-get-a-watch-2315040.html