常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

etch

本日のJT(09/29/10付け)のBILINGUALのページにSome space helps a language relationship to growという記憶に関する興味深い記事がありましたので,そこから英語の落ち穂を拾いたいと思います。
Stronger memories take longer to forget, the best example of which are "flashbulb memories" — those supremely powerful emotional experiences that seem to permanently etch themselves into our minds. Other memories, especially sensory ones, are retained only from a few seconds to mere minutes.
今日取り上げる表現はetchです。手元にある辞書には「[比ゆ的に][通例受身形で](記憶などに)…を刻みつける(on, in)」と載っていました(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。
このetchという単語は元々美術の用語から来ているようです。辞書にも「(金属板など)にエッチングする,食刻する,(絵など)をエッチングする」と出ていました(『スーパーアンカー』同上)。自分は美術に関しては門外漢なのでエッチング(etching)を国語辞典で調べてみたところ「銅板画で,ろう引きの銅板に鉄筆などで書いた線画を酸で腐食させて原版をつくる技法。また,その版で印刷した絵画。腐食銅版画。」とありました(『明鏡国語辞典』大修館書店)。酸で銅板をでこぼこにする様子から転じて「〈印・模様など〉をくっきり描く,際立たせる〈◆通例受身〉」という意味ができたと推測できます(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館)。以上のことを考慮に入れて本文に照らし合わせると,記事の中にある“flashbulb memories”というのはまさに記憶の中で「際立っている」部分となり,別の方法で言い換えれば記憶に深く「刻みつけられた」部分となります。
一単語に対して一定義という考えは捨てて,一つの単語が内包する意味の守備範囲をよく確認しながらこれからも英語学習を進めていきたいと思います。(ゼミ生 camel)