常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

イチロー特集#3crank out

先ほどの記事からさらに表現を拾っていこうと思います。記事にはバッターボックスに身構えるイチローの写真が掲載されています。その写真の下には以下のような文がありました。
Ichiro has cranked out 200 hits or more in nine consecutive seasons for some good and bad Mariners teams.
Originally published Thursday, September 16, 2010 at 10:01 PM
http://seattletimes.nwsource.com/html/mariners/2012919629_ichiro17.html
今回着目した表現はcrank outです。crankといえば昔,中学校の技術で習ったクランク機構を思い出します。しかし,ここではcrankにどのような意味があるのでしょうか。早速辞書を開いて調べてみると「…をクランクを回して動かす(up)」という他に「(著作物)を量産する(out)」と載っていました(『スーパーアンカー英和辞典』第4版,学研教育出版)。文脈上ここでは後者の定義が正しいことがわかります。正確な意味を把握するために英英辞書でも意味を調べてみると“to produce a lot of something very quickly”と出ていました(LONGMAN Advanced American Dictionary)。日本で「安打製造機」という異名を持つイチローですから,ヒットを「量産する」機械という風に例えられても違和感がありません。逆に,あれだけ多くのヒットを打つためには機械で正確に計算されたようなバットコントロールが絶対必要でしょうし,それがあったからこそ9年連続200本安打という偉業が達成できたと考えられます。
以前松井がメジャー通算1000安打を記録した時はcollectが使われていました(http://d.hatena.ne.jp/A30/20100428/1272432451)。コツコツ積み上げていく松井とヒットを量産するイチロー。2人のプレイスタイルの違いがくっきりと動詞にも表れていることがわかります。遠い異国の地で輝きを放つ2人のサムライの活躍から目が離せませんね。(ゼミ生 camel)