常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

イチロー特集#1bittersweet

イチローは17日のレンジャース戦に出場し,4打席中2本の安打を打ち10年連続200本安打という前人未踏の記録まであと9本としました。大記録を目の前にして現地の人はどのようにイチローを評価しているのか気になったので現地紙のThe Seattle Timesのウェブサイトを訪れてみました。日本メディアはイチローの大記録達成の時を,首を長くして待っている状態ですが現地メディアは少し違った視点でみているようです。
Mariners' Ichiro is chasing bittersweet record
The Mariners' season of monumental disappointment might actually yield one of Ichiro's most impressive records yet: He could become the first player in history to twice produce 200 hits in a 100-loss season.
Originally published Thursday, September 16, 2010 at 10:01 PM
http://seattletimes.nwsource.com/html/mariners/2012919629_ichiro17.html
なぜ偉大であるはずべき記録がbittersweetなのでしょうか。リード文にその理由がありました。イチローは大リーグの歴史史上初めて,2度チームが100敗している中で200本ヒットを達成するプレイヤーとなる可能性がでてきたのです。残り16試合中マリナーズが9敗すると屈辱の100敗に達してしまうと同紙は伝えています。ここでのbitterな記録は2度目のチームが100敗する中での200本安打,sweetな記録が10年連続200本安打となります。
ちなみにリード文にあった“He could become the first player in history to twice produce 200 hits in a 100-loss season.”の中には分離不定詞(split infinitive)が含まれています。分離不定詞とはtoと不定詞の間に副詞が入った状態の構文を指します。安井稔(1996)『改訂版英文法総覧』(開拓社)で調べてみると「分離不定詞は,一般に,悪文とされ好まれない.」という記述がありました。しかし,「分離不定詞が必要になってくる場合もある.それは分離不定詞を用いないとあいまいになったり,意図した文意が伝わらないような場合である.」とも明記されています。今回もproduceの前にtwiceを置いた方が文末に置くより筆者の思考の流れが乱れません。
日本メディアはどうしてもイチローの大記録ばかり目がいってチームの成績にはあまり関心を抱いていません。しかし,地元の人からしてみればイチローの記録だけではなくて,チームの勝敗も同様に気になるはずです。複眼的な視点から立体的に物事を考えられるのも英語学習の醍醐味ですね。(ゼミ生 camel)