常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

tar and feather

メキシコ湾(the Gulf of Mexico)で起きたオイルの流出が何とか塞がり(stanch)ました。しかし,その展望は決して明るくはありません。生態系への影響も懸念されています。本日のJT(07/20/10付け)は原油による汚染被害で苦しむ野鳥の様子を報じています。

Tarred and feathered: Plaquemines Parish Coastal Zone Director P.J. Hahn rescues a heavily oiled bird from Louisiana’s Barataria Bay, which is laden with oil from the Deepwater Horizon gusher, on June 26.

冒頭部分でまず頭に「?」が浮かびました。救出された鳥は原油(oil)にまみれているのに,ここではなぜかタール(tar)になっています。通常名詞形で羽と訳されるfeatherがここでは動詞になっているのも気になります。
様々な視点から思考を巡らせましたが,妥当だと思われる答えにたどり着けませんでした。仕方なく辞書で調べてみると,意外な意味があり即座に「!」が頭に浮かびました。『ジーニアス英和辞典』(第4版,大修館書店)によるとtar and feather〜で「〈人〉の体に熱したタールを塗り鳥の羽を張りつける《昔の刑罰の一種》;〈人〉を厳しく罰する[非難する]」という意味がありました。

さらに記事の隣にある写真に注目すると,羽に原油がこびり付いて瀕死の状態の鳥がうつっています。それはまるで鳥が熱したタール(tar)の上に鳥の羽(feather)を張り付けられ,刑罰を受けているように見えなくもありません(鳥は人と違って元々羽をまとっていますが)。辞書には載っていませんが,昔行われていた処刑の如く鳥が「苦しんでいる」と解釈できるのではないでしょうか。

刑罰のような苦しみを味わっている野鳥ですが,元々野鳥たちに罪はありません。海辺で生活する生命から見れば非難(tar and feather)されるべきなのは我々なのかもしれません。(ゼミ生 camel)