常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

夏が近づくに連れて,眠りにつきにくい熱帯夜(a sultry night)が多くなります。夏の季節,暑くてなかなか寝付けない方もおられるのではないでしょうか。しかし,夜の安眠を妨げるのは暑さだけではありません。暑さと同じくらい安眠を妨害するのが「蚊(mosquito)」の存在です。蚊に喰われるとかゆくて一晩中まんじりともできません。また,飛び回る際の高音も不快で,特に耳元を飛ばれると堪りません。今月中,私自身すでに何度か被害にあっています。
ブログで不満をぶつけてもらちがあかないので「蚊」にまつわる表現を探してみました。まず「蚊に刺される」という表現。どうしても「刺す」という言葉から“sting”を連想してしまいそうです。しかし,stingの原義は「とがった武器で刺す」という意味です(『ジーニアス英和辞典』第4版,大修館書店)。蜂などの昆虫は相手を威嚇するために動物を刺しますが,蚊の場合,生き延びるために自分からリスクを犯して動物の血を吸いにいきます。血を吸う管が攻撃する「武器」でない以上,stingを使うのは不適切だと言えます。そこで和英辞書を引くと,“I was bitten by a mosquito.”と出ていました(『スーパーアンカー和英辞典』第2版,学習研究者)。確かに日本語でも「蚊に喰われる」という表現があります。
次に気になったのが「蚊がたかる(寄ってくる)」の英訳です。2つ紹介したいと思います。
1詰めは,昔読んでいたNicholas SparksのNOTEBOOK(邦題『君に読む物語』)の中近い表現がありました。場面は夏の夕暮れ時,主人公であるNoahとその元恋人Allieが家に戻って行くシーンです。
“Come on, let’s go. The mosquitoes are getting vicious, and I’m starved.” (p. 51)
直訳すると「蚊が悪意を持ち始めている」となります。しかし,別の見方をすれば悪意を持っている(血を吸おうとしている)蚊が2人の回りをたかり始めていると解釈できます。vicious一語で蚊の様子が的確に表れています。
もう1つは,先日Persimmonくんが紹介してくれたswarmです。これはサッカー日本代表が「ハエがたかるように」ボールに群がるという意味で使われていました。
http://d.hatena.ne.jp/A30/20100626/1277519824
これから気温がますます上昇するため肌を露出してしまいがちですが,viciousな蚊には要注意が必要です。(ゼミ生 camel)