常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ご指名質問#18 Water, water, everywhereに挑戦

ご指名質問#18 Water, water, everywhereに挑戦します。
http://d.hatena.ne.jp/A30/20100617/1276779384
まず見出し中のwaterですが複数形(plural)のsがついていることから,可算名詞(countable noun)であることに注目。可算名詞のwaterには複数の意味がありますが,hike watersは「水増し→値上げ」(『リーダーズ英和』研究社)という意味だと思います。
「自分の代では値上げはしない」と明言していた鳩山党首が降板し,民主党は政策転換をはからねばならなくなったようです。ちなみに本日の新聞各紙の1面ではconsumption tax 10% hikeの文字が踊っています。
なお,何かの決断する前に,調査をすることによってよりよく知るということからtest the water(s)には「なりゆきを見る, ようすを見る, 予備調査をする」(『プログレッシブ英和中辞典』同上)という意味があります。現段階では確かに「予備段階」ですが,第二のギリシアにならないためにも予備なんていってられないのではと思いますが...。
蛇足ですがwaterには「(ダイヤの)透明度, 品質;(一般に)品質, 品位, 優秀性」や「(織 物金属板の)波模様, 波紋」といった意味もあることを押さえておきましょう(『プログレッシブ英和中辞典』同上)。
最後に田邉先生がつけられた標題のWater, water, everywhereですが,これはイギリスのロマン詩人Samuel Taylor Coleridge (1772-1834)の詩The Rime of the Ancient Marinerの一節から抜き出したものです。
Water, water, everywhere,
And all the boards did shrink;
Water, water, everywhere,
Nor any drop to drink.

この詩は英文学者斎藤 勇(たけし)(1887-1982)によって翻訳され(ちなみに斎藤 勇は私の研究テーマである旧制福島中学の卒業生ですが,晩年は孫によって刺殺されるという非業の死をとげられることになりました),『老水夫行』というタイトルで研究社から出版されています。部分は「至る所に水はあれども,船中の板すべてひずみぬ。 至る所に水はあれども,飲むべき水は一滴もなし。」と訳されています。(院生 小山本)