常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

文脈に投げ出された単語 positive考

菅首相は,週末に予定されていた上海万博訪問(Japan day)を取りやめ,口蹄疫が再び拡大した宮崎県入りをしました。外交よりも国内の危機管理。当然の帰結です。以下は再発を伝えるJT(06/12/10)の記事です。
Kan off to crisis-hit Miyazaki Kagoshima may close roads to contain foot-and-mouth spread(Kyodo News)
On Friday, the Miyazaki Prefectural Government said cows and pigs in the cities of Miyazaki, Hyuga and Saito tested positive in genetic tests for the highly contagious disease, indicating the infection has spread within the prefecture and beyond the area where it was initially concentrated.
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20100612a4.html
文中の太字の表現,positiveは気になる表現です。positiveと聞くと,私達は何となく「プラス」イメージをとらえがちです。例えば,positive attitudeと言うと,hopefulで,confidentな感じです。positive suggestionは建設的で前向きです。positive replyもそうですね。しかしながら,この記事にあるように感染症にかかっているかを検証した結果,positiveであるという場合には,「プラス」(「陽性」)なのでしょうが,検証の結果を待つ人(ここでは宮崎県のみならず社会全般)には期待しているものとは逆のnegativeな事柄になるのです(例:He was HIV-positive.)。ヒトの言葉の不思議がここにあります。
蛇足ですが,positiveを医学では「陽性」,数学では「正の」といった具合に「陽=プラス」イメージの漢字を用いて訳出した明治時代の先駆者はここまで考えたのかな,と思ってしまいます。なお,記事中,beyond〜以下は日本人学習者には,わかっていてもなかなかこうは書けないな,といった例になると思います。positiveの語用論的意味に加えて,これも自分の英語メモに転載しておいてください。(新体操のあさみ)