常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

英語文化遺産 #3 伊地知純正 その1

英文日記はinputしたものをoutputに連絡する,つまり仕入れた表現など使う機会を提供してくれる,またとない学習手法です。近年,この手法に再び光をあてた本がかなり出回っています。日記は間違いなく,良質な手法です。ただ昔から英文修業をしている人にはごくあたり当たり前のことですが...。
そんな人にとっての英文日記といえば,まずは伊地知純正(1927)『僕の英文日記』(研究社)でしょう。故伊地知純正(いじちすみまさ)早稲田大学教授は,武信由太郎,勝俣銓吉郎と並ぶ「早稲田の3大英文家」として人々の記憶に刻まれています。
    
             
英文で身を立て,大和魂を伝えると,故郷 宮崎を後にして,英文修業に一生をかけた人物でした。早稲田を卒業後はジャパンタイムズの記者を経験。そしてその力量を買われて,母校早稲田の教授となった人です。
英語ファンには『英語青年』の添削者としても記憶に残っていると思います。またオタクっぽい情報としては,戦後の歴代の首相の中でずば抜けて語学ができた故宮沢喜一元首相の奥方のお父上としても知られています(娘さんと宮沢しのなりそめは城山を参照)。
いずれにしても,ネットで名前を入れれば,たちどころに情報が集まるので,各自にまかせますが,早稲田大学商学部の伊東回想録(これもネットで入手可能),出来成訓先生のご著書ははずせません。
城山三郎(1993)『友情,力あり』講談社.
・伊東回顧録商学部の英語と三人の英作文家」
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/4513/1/92113_249.pdf
出来成訓(1997)『英語<納得>の技術』辞遊社.  
             
   
さて本題に戻りましょう。本書のずばぬけた特長が「revision」です。
   

                自筆の日記を撮影したもの
   
   
青年期に書いた英文日記を壮年になった伊地知氏が『英語青年』の投稿欄と同じような感じで,自らが校正し,講評していることです。その内容が英語学徒には勉強になるのです。そのため本書は一時,好評を博し,かなりの部数が出たとのこと。
本書のことを教わったのは教員時代でした。またまた,恩師 Ben先生からの受け売りです(知らない人は田邉祐司・他(編)(2007)『がんばろう!イングリッシュ・ティーチャーズ! 自主研修読本』(三省堂)を参照)。先生は語学の鬼才でした。英文の鬼でした。先生が次々と語られる先人の名前を心に刻み,先人たちが残した「英語文化遺産」を吸収すべく,古書店を歩きまわるようになったのです。
今回から,Ben先生を含む恩師からいただいた「英語文化遺産」を少しずつ,若いみなさんにもお裾分けをすることにしました。ただ,月1〜2回程度のペースと考えていますので,期待はされないように。次回も伊地知氏のことを少しばかり語る予定です。(UG)