常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

5/30,2010日本英語音声学会(EPSJ)参加報告

本日(5/30),早稲田大学で行われた日本英語音声学会(EPSJ) 関東支部第10回記念研究大会に参加してきました(午前中の練習試合のためTOEICは受けていません…)。
早稲田大学の松坂ヒロシ先生曰く,「予想よりも多い参加」だったそうです。本日は,東京外国語大学教授,鶴田知佳子先生のご講演をはじめ,7つの研究発表がありました(発表は2つの教室で同時にあったため,聴講できたのはそのうち4つでした)。書きたいことは山ほどあるのですが,ここではゼミに関係する鶴田先生の特別講演「同時通訳の現場での英語音声学」を中心に,学会の様子と私自身の感想を書きます。
説明するまでもないかもしれませんが,鶴田先生は東京外国語大学教授である他,NHK衛星放送やCNNの同時通訳者などでご活躍されている方です。今回は通訳者としての経験から英語の音声について様々なことをお話してくださいました。
内容は主に5つに分かれており,「通訳についての三つの質問」や「通訳の三つのプロセス」,「国際会議の舞台裏で:通訳のやりがい」,「通訳訓練の基本」,「通訳者の聞き取り—現場からの例」でした。内容を以下に要約します。
・ 通訳者とは英語の能力が完全ではない人の知識や経験を活かす,黒子のような役割。
・ 今までの人生経験が物をいう仕事でもある(そのため職場には30代以下は珍しいそうです)。
・ ベテランの通訳者ともなれば話のながれから結論を予想することもできる。
・ 訳出の際には,英語を主言語としない人の発音の特徴であるとか,文化も考慮した上で通訳しなければならない。
・ 結論として,通訳をする上で大切なことは「理解力と表現力」であり,これらを向上するためにはあらゆるメディアを通して情報を収集,知識を身につける必要がある。
・ 英語は聞こえるが訳出が苦手と言う人は,まず日本語の表現力を磨く必要がある。
表現力に関しては米原万里さんの言葉をお借りし,「母語の上にたつ外国語の家」とおっしゃられていたのが印象的です。つまり,外国語は母語以上にはならないため,日本語の運用レベルを上げなければならないということです。この他にも実体験のエピソードを交えながら,ある英文をどのように訳したのかなど,貴重なお話を聞くことができました。
日頃から田邉祐司先生の講義を受けていること,また鶴田知佳子先生のわかりやすい語りと充実した内容のために,すぐに魅了されました。特に,"What'chu talkin' 'bout, Willis?"「冗談は顔だけにしろ!」が取り上げられた時は笑ってしまいましたが,ここで笑えたのも既知情報として情報ネットワークができていたからだと思います。鶴田先生以外にも関東学院大学教授,御園和夫先生などのお話も聞くことができたため,非常に有意義な3時間でした。以上,簡単ではありますが学会の感想とさせていただきます。(ゼミ生 Lbow-Shoulder)