常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

Here I go!

人との出会いは大切です。しかし,言葉との出会いも人生の楽しみですよね。言葉は時として鋭く心に突き刺さることもありますが,優しく励まし人を突き動かす原動力にもなりえます。日夜活字を読みながら言葉に出会いますが,残念ながら時が経つにつれ大事な言葉を忘れていってしまいます。けれども,自分の心を強く揺さぶった言葉はいつも離れず心の中に生き続けるものです。
ずっと昔に田邉祐司先生に教えていただいた言葉があります。それは「啐啄(そったく)」という言葉です。これは禅宗の言葉で,「師匠と弟子との呼吸がぴたりと一致する」という意味があります。そこから転じて,「絶好の機会」という意味も生まれました。原義は「『啐』はひなが卵の殻を破って出ようとして鳴く声,『啄』は母鳥が殻をつつき割る音」だそうです(『大辞泉小学館)。(そう言えば,石川啄木にも同じ漢字が使われていますね。)もし,ひなが鳴き声を出さずに殻に閉じこもっていたら,ひなはやがて息ができなくなり,窒息死するでしょう。逆に,母鳥がひなの声を無視して早く殻を割ってしまっても,ひなは未発達のため死んでしまうかもしれません。これは教育の現場でもなぞらえると田邉先生はおっしゃっていました。いくら教師が張り切っても,学習者がそれに応じなければ教師の空回りで終わってしまいます。逆に,学習者が意欲的に学ぼうとしても,教師が生徒の学びたい要望に答えるだけの技量がなければ学習者の意欲は削がれてしまいます。阿吽の呼吸で仕事をする子弟関係のような「支援」と「見守り」の絶妙なバランスが大切なんだと思いました。明日の月曜日(5月31日)から三週間,中学校で教育実習を行います。実務経験がないだけに失敗の連続だと思いますが,「啐啄」を胸に生徒の微々たる声にも耳を傾け,外側から必要に応じた支援をしていきたいと思います。実習先で素晴らしい人と言葉との邂逅を願いながら…。いってきます。(ゼミ生 camel)