常時英心:言葉の森から 1.0

約10年間,はてなダイアリーで英語表現の落穂拾いを行ってきました。現在はAmeba Blogに2.0を開設し,継続中です。こちらはしばらくアーカイブとして維持します。

ことばの糸にとらわれて

先週のSE(Special English)の冒頭で,世界的な辞書を編纂したJames Augustas Henry Murray(1837~1915)のことを少し述べました。その時は時間があまりなかったので,それっきりでしたが,今,大修館の原稿を書いている最中に,別の書物を探していたら書斎の隅からこの本が語りかけてくるではないですか!ここに簡単に紹介しておきます。(UG)

K. M. Elisabeth Murray (1977) Caught in the Web of Words James Murray and the Oxford English Dictionary. Oxford University Press.
収録語数41万4825語,70年もの歳月が完成まで費やされたOxford English DictionaryOED)第1版。世界最大の英語辞典と呼ばれるこの辞書の編集主幹だったマレーは,貧しい家庭境遇のため進学することはかなわず,独学で途を切り開き,ついには英国希代の辞書編纂者,言語学(当時は博言学と呼ばれていました)となった人物でした。その孫娘が語った祖父の伝記です。Caught in the Web of Words。そのタイトルに引かれ高校教員時代にむさぶるように読みました。それまでの言葉への情熱がいかにうすっぺらの,生半可のものだったか,ということに気づかせてくれた本でした。

関連資料:
K・M・エリザベス・マレー(著)加藤知己 (訳)(1984)『ことばへの情熱—ジェイムズ・マレーとオクスフォード英語大辞典』上 三省堂.
K・M・エリザベス・マレー(著)加藤 知己 (訳)(1984)「ことばへの情熱—ジェイムズ・マレーとオクスフォード英語大辞典」下 三省堂.
永嶋大典(1983)『OEDを読む—『オックスフォード英語大辞典』案内』大修館書店.
サイモン・ウィンチェスター(著) 鈴木主税 (訳)(1999)『博士と狂人—世界最高の辞書OEDの誕生秘話』早川書房. (これは映画化されたんだっけ?)
http://www.oed.com/about/